一橋大学

EUワークショップ 2021年6月30日 コメンテーターのコメント

2021年8月6日中西優美子(Yumiko NAKANISHI)

EUワークショップ

2021年6月30日

コメンテーター:一橋大学大学院経営管理研究科 張 婷

 

発表者①李さん「不動産人役権制度に関する立法論的研究—中国民法典居住権立法の例から」

 

本日は、李さんが「不動産人役権制度に関する立法論的研究」というテーマに対して、研究動機、前期研究、研究方法と今後期待される研究成果を発表されました。

李さんはまず不動産運用の重要性、日本と中国が直面している高齢化社会の背景と日本の孤独死やニートの増加などの社会問題を紹介されました。その上で、2021年1月1日から中国民法典において居住権の導入を背景として、日本で不動産が有しかつ経済能力不足すなわち中低収入の人に注目し、不動産人役権制度導入の可能性と必要性を検討されました。

 

質疑応答では、まず二見さんから草食系男子とニートの関係について質問し、ニートと言われた人たちが増えている社会的要因を深掘りする必要があるとの助言がありました。それに対して、李さんは草食系男子とニートの関係を具体的に説明されました。

その後、二見さんからは、不動産運用は具体的にどう運用するについて質問がなされました。李さんが具体的な運用過程を説明した後、秋山先生は李さんの観点を整理し、より明確に説明してくださいました。

何さんからは、中国と日本では社会状況や文化が異なるため、日本で導入する場合、導入する目的の違いに注意する必要があるとの助言がありました。

熊本先生からのコメントでは、立法許容性の判断基準、すなわち何をしめせば立法許容性があると判断するという質問がなされました。それに対して、秋山先生から立法許容性という言葉を再検討する必要があるとの提言がなされました。

最後は竹村先生から、この授業の目標に合わせるために、人役権についてローマ法やヨーロッパに関する研究をもっと進めていけばよいとの助言がありました。

 

発表者②何さん「強制的な技術移転に関する法律分析」

 

今回の何さんの発表では、2018年に米国が中国に301調査を実施したことを背景に、その調査のレポートでの強制的な技術移転について法律分析を行うことが発表されました。

何さんはまず強制的な技術移転の主な特徴、具体的な法律条文と原因を紹介されました。その上で、今まで強制的な技術移転を理由に米国の圧力を受けた国は中国だけでなく、日本、インド、インドネシアなどの国もあるので、強制的な技術移転は法律問題の性質以外、政治問題の色彩もあるという観点を説明されました。

 

質疑応答では、まず二見さんから中国はまだ発展途上国なのかという質問が挙がりました。それに対して、何さんは中国の一人当たりGDP及びその他の指標がまだ先進国レベルにはるかに達していないという観点から説明されました。

その後、竹村先生から専門用語を修正されました。

熊本先生からは、強制的な技術移転に対して法律的に分析すると、具体的にどういう分析をされていくのかを質問し、これから研究の方向性をより明確にすべきだとの助言がありました。それに対して、何さんは今後の研究の予想と計画を簡単に説明されました。

秋山先生は熊本先生の意見に賛同し、中国を例にして国際法の合理性を検討してみるなど、法律分析についてもっと深く考えてみたほうがよいとの指摘がなされました。

最後は秋山先生から、今回の発表は強制的な技術移転について先進国と発展途上国の間に矛盾があるという前提で分析されているものの、日本のような先進国でもこうした問題に直面していたので、単に発展途上国と先進国を分けるよりも、一般論としてこの分野の問題点を分析したほうがよいかもしれないとの助言がありました。