一橋大学

EUワークショップ 2020年6月17日 報告者コメント

2020年6月18日中西優美子(Yumiko NAKANISHI)

EUワークショップ2020617

法学研究科修士課程1年 二見華

修士課程1年の二見です。今回は、EUワークショップにおいての発表が初回であったのと現在の研究状況を鑑みて、国内判例の紹介から始めてEU指令に関連付けて発表させていただきました。

著作権法には特許法101条のように「間接侵害」が明文規定されていないことに留意した上で間接侵害の論点である、侵害主体論について概要を説明し、前提として研究中の国内判例をいくつか取り上げました。国内の重要判例としてはカラオケ法理を最初に提唱した「クラブ・キャッツアイ事件」とカラオケ法理の判断基準を覆したともいえる「ロクラク事件」について取り上げ、間接侵害の侵害主体の射程設定の困難さを説明しました。最後に「TVブレイク事件」を取り上げることによって、日本でもDSM17条で指摘されているような最善努力義務のような侵害主体性とは異なる要素を総合判断した裁判例を紹介し、DSMの目的と主にその17条に焦点を当てて報告をしました。

質疑応答ではとても有益な情報をたくさんいただくことができ、自身の研究を進めていくにあたって考慮していくべき要素を再確認できたと思っております。吉本さんからは、アップロードフィルターの批判の根拠とFTAにおける知財の共同的な枠組みの存在について質問していただきました。アップロードフィルターについての批判はその開発費用の高さや正確な実現可能性が危惧されていましたが、オランダのウェブセミナーでは、実現可能になった場合は導入することに前向きだった印象があります。しかし、上野さんが指摘されたような「表現の自由」との兼ね合いで、現実的に実現可能になったとしても、創作者主義を掲げているEU加盟国が導入する可能性は低いと考えられます。その点について、もう一度ウェブセミナーの内容を整理したうえで誰がどのような立場で導入に賛成であったかということを明確化したいと思います。

秋山先生からは、間接侵害の前提条件となるコンテンツ自身の様態(侵害の有無)について質問していただきました。自身の研究範囲をどこまで広く深く取り扱うかについては今後の研究調査を進めていきながら、軸を見失わない程度に掘り下げていきたいと思っております。

川上さんからはとても興味深い「コピミズム伝道協会」というコピペを神聖な行為とする、国が認可した宗教団体の存在を教えていただき、秋山先生が指摘されたような、「EUにおけるこのような著作権などの規制をバネにして政治や社会的活動」が活発なのか、また活発なのは規制に由来している可能性があるのかなどの、EU指令によってできた加盟国各国の著作権法が市場だけでなく、国民や地域にどのような影響を与えているのかという考察のきっかけをいただきました。比較法研究をするにあたって、他国の法制度を導入検討する場合には、その法制度が社会や国民に与えている影響についても考慮する必要があると感じました。

大月先生からは「伝統的模倣」という再現美術についても指摘をいただき、それとパロディーの関係、そしてアウエルバッハの著書である「ミメーシス」についても言及していただきました。自身の知見を拡げるためにも読んでみます。

今後の研究としては、国内判例の研究を進めて長期休暇を利用してフランスの判例とその翻訳と両者の歴史的比較を行う予定です。