一橋大学

EUワークショップ 2020年6月17日 コメンテーターのコメント

2020年6月17日中西優美子(Yumiko NAKANISHI)

EUワークショップ 2020617

コメンテーター:上野 貴彦

発表者①大塚さん:「気候変動レジームにおける大国の責任と米中関係――パリ協定の成立から」

大塚さんは、2015 年に採択されたパリ協定の成立に焦点を当て、主要因となった米国と中国の二国間協調関係の進展とその条件を明らかにするための分析枠組みを検討しました。より具体的には、アリソンの政策決定モデルをいかに用いるか、現在までに析出できた関連事例の一覧を示しながら問題提起されました。

質疑応答では、竹村先生の質問をきっかけに、キーワードの定義をめぐる議論が展開しました。また、「EUの事例をいかに用いるか」という大塚さんご自身の質問に呼応する形で、大月先生や秋山先生がリプライされました。議論を通じて、環境保護をめぐる諸規範の世界的な広がりにおけるEUの役割を検討し、米中とは異なる立ち位置と官僚機構そして正統性の根源を有するアクターとしてのEUを加えることを通じた、分析の精緻化可能性が示唆されました。先行研究のさらなる整理を含め、修士論文執筆に向けた研究の発展が期待されます。

発表者②二見さん:「著作権法と特許法における間接侵害について」

修士1年の二見さんは、今後の研究の核となる「著作権法と特許法における間接侵害」に関する概要説明に続いて、国際著作権法学会(ALAI)オランダ支部開催のウェブセミナーへの参加体験を踏まえ、欧州での最新の議論を整理されました。

質疑応答ではまず、A Iを用いた著作権侵害判定システムとしての「アップロードフィルター」などのテクニカルタームに関する確認がなされました。その上で、「創作(者)」を重視する欧州特有の著作権理解や、欧州の歴史的文脈にも密接に関わる「パロディ動画」や「コピペ教」といった話題に関する発言を挟みつつ、この問題の欧州における社会的インパクトに関する問題提起もなされました。また、今後のフランス法の判例研究に関する、二見さんの調査計画についても様々なアドバイスがなされました。