一橋大学

6月1日のEUワークショップ コメンテーター(松村くん)のコメント

2022年6月15日中西優美子(Yumiko NAKANISHI)

EUワークショップコメント(6月1日、三浦さん)

松村一慶

 

今回の報告では、三浦さんが自身の卒論の内容についてご報告いただきました。テーマは19世紀のイギリスの人道主義者の共感と差別の言説を、原住民保護協会活動報告書、奴隷解放運動にかかわるパンフレットの公共性の高い史料、福音主義の宣教師の私的史料等を用いて分析されました。

彼女が受けたコメントとしては、イギリスはフランスやスペインなどのほかの宗主国と比較してどう異なるのかという質問がありました。また、EUとアフリカ、カリブ海諸国が結んだロメ協定、コトヌー協定、その後継の6地域ごとのEPAを含む独立後の欧州=アフリカ関係を現代の課題問題提起として延長に見据えたうえで19世紀の人道主義はどのような歴史的意義があるのかという質問もありました。

また戦時人道法の成立過程において、人権と人道はボキャブラリーとして連動して形成されていったが、20世紀には人権が破綻しているとき、つまり戦争時に人道が作用するように、両者は別物となったといいます。人道主義の歴史において19世紀の出来事や関連人物(アンリ=デュナンなど)の役割を関連付けて考えるといいかもしれないと個人的に思いました。

また、李佳欣さんは筑摩書房の『ヨーロッパの帝国主義:生態学的視点から歴史を見る』をおすすめしてくださいました。この本をはじめ、帝国主義、人道主義、宗主国=被宗主国関係を考察された本をさらに参考にして、より洗練されたものとなることを期待しております。

卒論の時点で詳細な一次史料の分析ができているのはとても素晴らしいと感じました。今後の研究の進展にも期待できると考えます。