一橋大学

判例の翻訳(Translation of Case Law)

2014年3月11日中西優美子(Yumiko NAKANISHI)

本日、Case C-409/06 Winner Wetten GmbH v Buergermeisterin der Stadt Bergheimの判例研究の原稿「EU法の優位の原則と国内過渡的措置」を提出しました。自治研究の2014年5月に掲載される予定です。

判例研究原稿の半分は、事件の事実概要と判決の紹介です。準備の段階でこの部分に時間を割くことになります。初めに英語版を見て、ドイツ語版を見て、ネックとなるところのフランス語版を見ます。

今回は、EU法優位の原則が問題となっていましたが、英語版ではprimacy of directly-applicable Union law、フランス語版では、primaute du droit de l’Union directement applicable、ドイツ語版ではVorrang des unmittelbar geltenden Unionsrechtとなっていました。英語版、フランス語版の訳では直接適用可能なEU法となりますが、ドイツ語版では、直接的効果のあるEU法となります。今回は、直接適用と直接効果は区別しないといけないと考えて、後者の訳にしました。

翻訳にあたっては、まず1回、さっと読みます。それで、判例研究として取り上げる価値があるかどうかを判断します。それで、おもしろそうな事件だと思えば、法務官の意見をざっと読みます。それから、法務官の意見を日本語の上手さなどは考えず、ただ日本語に置き換えます。その後、判決を丁寧に読み、翻訳します。この場合も日本語の表現は考えておらず、意味だけをとるようにします。ここまでは手書きで、その後翻訳の部分について、パソコンを使って文書にします。この際は、まだ日本語表現を考えず、素直に翻訳します。その後、プリントアウトして、自分で翻訳したのを読みます。このときに赤ペンでおかしな表現、意味が分かりにくいもの、てにおはをチェックします。その後、何回かこの作業を繰り返します。このときは、第三者目線をもつことを心がけます。

英語をそのまま翻訳するととても複雑な文章になったりして難しいので、できるだけ分かりやすく読みやすくしたいと思っています。もうひとつ意識しているのは、「商品」に仕上げるということです。判例を読むのは趣味ですが、判例研究を執筆するのはお仕事と思っています。