一橋大学

EUワークショップ・コメンテーター(6)

2014年10月3日法学研究科

社会学研究科総合社会専攻1年 上野貴彦

今回は、「企業結合規制の欧中比較研究」に関して周さんが、「ドイツにおける神冒涜罪の制定過程」に関してSさんが発表を行いました。

第一発表は、EUと中国の競争法(独占禁止法)に関する法学的かつ極めて専門的な議論でありましたが、他研究科の教授陣から比較の方法に関する重要な指摘がなされました。近年になって策定され、そこにはEU法の影響が見られるといわれる中国の競争法ですが、実際に中国とEUの両地域における法とその運用実態を比較する際にはその水準を明確にしなければなりません。市場主義経済を導入してからの歴史が比較的浅い中華人民共和国と、市場に対する各国民国家を単位とする介入のあり方を変革してきたEUという2つの単位をすり合わせることは大変困難ですが、このアドバイスを通じて、周さんは次回の発表における方向性をより明確に定めることができたようです。

一方、ドイツにおける神冒涜罪に関する第二発表では、ヨーロッパ社会の重層的な歴史をいかに分析すべきかという課題が浮き彫りになりました。発表者が夏休みの間に積み上げた、古代から現代に至るまでの通史的な法制史の議論を踏まえた精査をいかに分析に活かすかについて、参加者から活発な意見交換がなされました。政治権力と宗教の関係に注目した法社会学・宗教社会学的な(あるいはマックス・ウェーバー的な)切り込むべきではないか、あるいは19世紀後半からの政教分離に関する議論へ重点を置くべきではないかなど、法学と歴史学や社会学を接近させるための試みに関する様々な提案がなされ、大変有意義なワークショップとなりました。