一橋大学

EUワークショップ 2025年6月18日 コメンテータによるコメント

2025年7月4日中西優美子(Yumiko NAKANISHI)

SD241026 劉海寧

今回のEUワークショップは、社会学研究科の胡さんと国際公共政策大学院の石川さんから報告を頂いた。

胡さんは、「価値観に基づく近年の中国とEUの外交関係――「民主主義」「平等」を中心に」という仮テーマで、ヨーロッパ連合と中国の複雑な関係を取り上げ、両方の価値観を示す文書や政策で、「民主主義」と「平等」という二つの視点から、研究を展開しようとした。中国とEUが重視する価値観の相違が生じる理由・価値観の相違が両者の関係に与える影響・これらの問題から生じる原因への対応という課題を設定し、該当研究の意義・手法についての報告をした。

質疑では、胡さんの報告で言及された中国と欧州の捉え方が異なる「平等」、即ちEUによる「権利型平等」と中国による「発展型平等」の定義・実際の様子やその「平等」を達成させる具体的な政策展開に対する質問が挙げられた。これに対し、学生の参加者は一つの政策事例を取り上げ、少しだけの解釈をした一方、価値観外交を研究するにあたって、具体的な政策より、外交の場面で現れる「価値観」やその位置付けの方が重視すべきだという意見も出た。そして、秋山先生は、「民主主義」と「平等」という二つの視角を取り上げた理由について聞いたうえで、「平等」という概念の多次元性や複雑な歴史的な経緯で成立された多様な平等などで、胡さんの報告への助言をした。胡さんは、この後の作業として、先行研究の整理や取り扱おうとする概念と視角 の確定などが挙げられるとも話した。

石川さんは、「脱炭素ビジネスの振興と環境政策との連携」というテーマで、官民連携による国内の環境負荷低減策の模索、政策の推進により産業発展と環境問題に対する解決策の提供が両面でできるのではないかという仮説を提示したうえで、地域脱炭素政策への適用可能性・民間企業の脱炭素ビジネスの様態・EU圏の法策定と環境政策の先進性の差異などの視角から考察しようとした。特に、フランスという国を取り上げ、特定の環境関連法と施策を、日本との比較で一定の結論を得ようとしていることで、前年度の発表テーマと異なる部分もあった。

質疑では、参加者の一人の太田さんは研究の重心が日本との比較にあるが、具体的にどの部分に注目するのかということを定めることを提起した。政策プロセスの異同か、日本の政策の見落とし所を見るかということである。そして、秋山先生は、フランスの事例を日本と比較するには、政策そのものだけではなく、各地の独自の文脈を念頭に置きながら、進展がよりしやすいとの助言をした。それ以外に、脱炭素政策が多くの方面に影響を与えるため、住宅政策などの視角からの国際比較もあり得るという感想も述べられた。