EUワークショップ 2025年12月17日 コメンテーターコメント
2025年12月27日中西優美子(Yumiko NAKANISHI)
JM250001 長谷川愛
今回のEUワークショップでは、劉さんと胡さんから報告を頂いた。
劉さんは、「ヨーロッパにおける言語権保障の多層的構造と国家統合の相剋」をテーマに、欧州評議会における言語権保障の変遷、特に「欧州少数・地域言語憲章(ECRML)」の受容過程に焦点を当てて研究をしている。
本研究では、欧州人権条約14条に規定される差別禁止原則による消極的な権利保障の限界と、ECRMLによる積極的な権利保障への転換という歴史的背景を踏まえ、ECRMLに対する国家の対応が異なるフランス・スペイン・アイルランドの3カ国を比較分析することが目的とされている。具体的には、欧州レベルでの多層的な言語権保障の進展が、各国の伝統的な国家統合の論理といかに衝突し、調整されているのかという相剋関係に着目をしている。
質疑では、「言語権」の内容や法的性質、権利主体などの点に加え、今後の課題設定の方向性などについて議論がなされた。
胡さんは、「価値観に基づく近年の中国とEUの外交関係ー『民主』『平等』を中心に」というテーマで、中国とEUの外交における価値観の相違がもたらす実質的な影響について報告を頂いた。
本研究では、既存の先行研究の多くが歴史的経緯の記述や、「民主国家対権威主義国家」という単純な二元論に留まっている点が課題として指摘されている。その上で、中国とEUが掲げる「民主」や「平等」といった中核的価値観にどのような相違が存在するのかを理論的に整理する。そして、その認識における相違が経済制裁、安全保障、人権問題といった具体的な外交実践において、いかなる摩擦や衝突を生じさせているのかを実証的に明らかにすることが目指されている。
質疑では、中核的価値観の違いと外交関係の影響の測り方などについて質問がされた。


