一橋大学

EUワークショップ 2017年11月1日のコメント

2017年11月16日中西優美子(Yumiko NAKANISHI)

社会学研究科 上野担当

今回は11月1日に行われたEUワークショップにおける社会学研究科修士課程の奈良詩織さんによるフランスと二重国籍者の関係についての報告と、国際・公共政策大学院修士課程の飯田萌さんによるASEMに関する報告とについて、コメンテーターとして報告します。
奈良さんは、修士論文提出を控えたなかで、フランスと二重国籍者の関係に関する法的・政治的展開について、2015年のパリ同時多発テロ事件以後に顕在化した二重国籍の是非をめぐる論争について、それ以前に起源を遡る形で検討を深めました。
報告後の質疑応答では、2015年以降に限定的な政治的文脈において高揚した「二重国籍問題」とそれ以前における二重国籍者の処遇をめぐる制度変化の間にある連続性とともに、その不連続性にも注目しながら分析を進める必要性が指摘されました。そのほかにも、修士論文における論点の明確化につながる指摘がなされ、修士論文の最終仕上げに貢献するワークショップになったのではないかと思われます。
一方修士1年の飯田さんは夏学期の報告を発展させ、「ASEM way」と呼ばれる会議の特徴に注目するなかで、EUと東南アジア諸国によるASEMの会合が(その成果に乏しい時期があるにもかかわらず)存続している理由について検討しました。
報告後の質疑応答では、研究手法に関して、「ASEM way」をめぐる政治的言説を相対化し、研究者自らがそれを分析視角として再定義する必要が指摘されました。夏学期のワークショップにおいてはASEMという対象へのアプローチをめぐる議論が展開しましたが、今回はそのASEMに内在的な特徴に対していかなる分析手法が有効なのかをめぐる指摘やアドバイスが数多くあげられました。今後の研究の進展が期待されます。