一橋大学

EUワークショップ コメンテーターのコメント(2017年1月11日)

2017年1月25日中西優美子(Yumiko NAKANISHI)

法学研究科 法学・国際法専攻

博士後期課程1葉懿芳(ヨウイホウ)

今回は11日に行われたEUワークショップにおける法学研究科博士後期課程1年の石井さんによる「EUエネルギー外交:エネルギー同盟政策の展開と域内・域外関係への影響」関する研究報告と社会学研究科修士課程の奈良さんによる「現代フランスにおける二重国籍と国籍制度の変遷」に関する研究報告とについて、コメンテーターとして報告させていただきます。

報告者の石井さんは、まず前回の報告と今回の報告の位置付けを述べました。前回の報告では、国際組織としてのEUが行うエネルギー対内・対外政策が何に基づきなされていることについて法的側面を中心に検討した。石井さんは、今回の報告は政策の策定について、3つのレベルから意思決定過程を定性的な検討を行った。3つのレベルは戦略立案レベル、立法行為レベルと政策実行レベルに分類し、3つの案例を取り上げて検討した。

石井さんは、意思決定過程に関わるアクターを中心に、それぞれのレベルで考察した。戦略立案レベルでは、エネルギー同盟政策に最も直接的関与する組織である欧州理事会、理事会と欧州委員会の関係を確認した。立法行為レベルについて、政府間協定に関する情報交換メカニズム決定(IGA Decision 994/2012/EU of 25 Oct. 2012)にまつわる欧州委員会と理事会と欧州議会の関係に着目し研究されるそうです。政策実行レベルについて、PCIsProjects of Common Interest)の事例にEU-加盟国―事業主体間関係が検討された。報告後の参加者からは、3つのレベルを分けて検討する意味、パイプライン以外のインフラ政策の検討可能性と今回の報告と博論との関連性など質問ありました。エネルギー政策・外交政策のフュージョンにおけるEU意思決定過程というホットなテーマである本研究の進展は、注目すべきと思われます。

一方、奈良さんは、研究テーマの変更によって、今回は現代フランスにおける二重国籍と国籍制度の変遷について、法制度の歴史発展を検討した。20151113日のパリ同時多発テロ事件の実行犯は二重国籍であることが判明し、フランスのF.オランド大統領による憲法改正案が提案された。奈良さんは、もし改正案が通過すれば、二重国籍者について不平等待遇の原則が憲法に規定になり、かつ、無国籍者を生む可能性も否定できないと指摘した。複数の国籍を持っていることが直接に他者を傷つけるとは考えにくいにもかかわらず、なぜ重国籍が問題視されているのかに着目し研究されるそうです。報告後の参加者からのコメントでは、フランスから出ていた人の国籍問題、移民の同化・融合困難の社会的文脈の提案等もなされました。パリテロ以後、フランスにおける移民統合政策は、現在注目されている議題といえるであろう。本研究の進展について、期待されてます。