一橋大学

2024年6月19日のEUワークショップ 学生コメンテーターによるコメント

2024年6月29日中西優美子(Yumiko NAKANISHI)

コメンテーター: 太田駿(社会学研究科)

 

 

6月19日のEUワークショップでは、社会学研究科の劉海寧さんと国際・公共政策大学院の石川彩花さんの2名による報告が行われた。

 

劉さんは「アイルランド共和国の義務教育におけるアイルランド語政策及び教育実践」というテーマを設定し、報告では、アイルランド語が衰退しているという現状に対して、その歴史的背景及び、現代の教育現場でのアイルランド語の位置付けについて言及された。

イギリスによるアイルランド支配を契機として英語が主流言語となることで、アイルランド語話者の減少をもたらした。また、公教育制度においてはアイルランド語が必修科目として位置付けられる一方で、卒業試験などでアイルランド語以外の言語を選択できるなど、アイルランド語衰退の要因も指摘された。

質疑応答では、このアイルランド語の衰退の問題が他の言語問題とどのように関連があるのかということや、アイルランド語の消滅がどのような影響をもたらすのかなど、アイルランド語の問題がどのような特殊性を持つのかについて議論された。また、アイルランド語の衰退の要因として、国内の問題だけでなく、国外の要因、例えばEU、グローバリゼーションなどのような、よりマクロな視点からの検討の必要性もあるのではないかという意見もあがった。

 

 

石川さんは「地域脱炭素の推進における官民連携―脱炭素ビジネスの振興―」というテーマで、脱炭素の推進とともに地域の課題を解決する「地域脱炭素」について報告を行った。

今回の報告では、日本における地域脱炭素の官民連携の状況について整理し、さまざまな支援・交付金の制度が整備されて脱炭素に取り組む自治体が多く存在する中で、課題や問題点も見られることが示された。また、欧州において官民連携が進んでいる地域としてオーストリアが挙げられ、今後の研究の方向性の一つとしてオーストリアにおける取り組みの分析も示唆された。

質疑応答では、地域の課題に大企業が介入することについてどのようなメリット、インセンティブがあるのかという、ビジネスの視点からの地域脱炭素の意義や有効性などが疑問に挙げられた。また、研究の方向性に関して、脱炭素の中でもどの分野に着目するのかによって、対象や事例の選定も定まってくるのではないかという助言もあった。