一橋大学

2022年11月30日のEUワークショップのコメンテーターのコメント

2022年12月10日中西優美子(Yumiko NAKANISHI)

コメント:国際・公共政策大学院グローバルガバナンスプログラム一年 李佳欣

 

報告者① 李素芳さん「不動産における人役権制度の立法論的考察——中国民法典居住権立法の例から」

 

李素芳さんの研究目的は中国が新設した居住権に関する法律の目的を、居住権の起源であるローマ法の内容を検証することで探ること、そして、日本法にある相関法律と比較研究をすることを通して、中国における「居住権」が今後直面するかもしれない課題を解決するためのアイデアを検討することです。今回において、李さんは前回の発表内容に踏まえながら、現段階での研究進捗状況について発表しました。中国の「物件法草案」における居住権をめぐる論争、および日本における人役権に類似する制度に対する分析の部分に重きを置いて紹介しました。それから、中西先生の質問に応じ、李さんはまた中国における居住権の相続と青年層の住宅所有の実状について言及しました。

質疑応答では、中西先生からは、法律は社会の現状よりも遅れて変わるため、有権者にこの法律は現状を変えることができると信じさせ、認めさせるにはどうすれば説得力、信頼力を持つようになるかについての助言がなされました。そして、大月先生からは、個人所有権とローマ法に関する知識を整理しながら、個人所有権が指すのは一体何かについて明確にしなければならず、ローマ法のバリアにも注意すべきであるという指摘をいただきました。

 

報告者② 熊芷馨さん「トランス=ユーラシア・ロジスティクス(CRE)」

 

熊芷馨さんは中国とヨーロッパおよび「一帯一路」沿線諸国を結ぶ国際鉄道コンテナ複合輸送列車であるCREの発展、役割と運行現状について発表しました。また、先行研究についての言及もありました。

質疑応答では、発表においてメインの研究関心については明確に提示されていないため、この点を巡って先生方々に質問されました。質問に対し、熊さんは具体的な研究問題はまだ決めていないが、直接投資以外のCREに対する影響のある要素に興味があると回答しました。秋山先生からは、ウクライナ戦争やインフラ投資などのテーマを提示していただきました。熊本先生からは、ミクロの影響に注目すること、そして海路との競争も良い切り口になるというリサーチクエスチョンの絞り込みについての助言がなされました。大月先生からはCREのネットワークを拡大することで中国の経済発展にどのようなインパクトがあるかについて調査すれば、いい研究になるという助言がありました。