一橋大学

2022年6月22日 EUワークショップ コメンテーター李佳欣さんのコメント

2022年7月5日中西優美子(Yumiko NAKANISHI)

コメント:国際・公共政策大学院グローバルガバナンスプログラム一年 李佳欣

一つ目の発表は、経済学研究科一年の瀋丁昊さんの「混合寡占産業でジョイントベンチャー企業が最適私有化への影響」でした。関税が存在する場合、ジョイントベンチャー企業の存在が国内公営企業の部分私有化政策にどのような影響を与えるかをリサーチ・クエスチョンとする研究です。

熊本先生に瀋さんの用語上の問題を修正していただき、瀋さんが研究に利用しようとする数学モデルが適切であるかどうかを確認されました。それから、熊本先生は、(1)なぜ海外資本が直接に中国国内の民営に参入しないか、(2)なぜ国内公営企業が直接に国内民営企業に参入しないかという二つの質問をされました。質問に対し、瀋さんはそういう状況は実際に存在するが、中国ではかなり珍しいと回答しました。また、瀋さんは大学院での実現可能な研究を考慮したうえ、研究対象を外国資本の中国国内公営企業への参入に絞ったという説明を付け加えました。さらに、李素芳さんは中国の法律により、外国資本が直接に中国の民営企業に参入することは制限されていると補足しました。

中西先生は、寡占産業でコールノー競争を行う際、各企業がどのようにして生産量をコントロールするかという質問をされました。

ワークショップ参加者たちは、瀋さんの発表内容に基づき、異なる産業において異なる基準で考えるべきではないでしょうかという指摘を与え、国有企業と公営企業の定義及び特徴における違いについて議論を展開しました。

二つ目の発表は、経営管理研究科一年の顧洪菲さんの「ホテルのハウスキーピング部分における倫理的リーダーシップ、ストレス及び従業員の離職意向の間の関係・ソーシャル・サポートによる調節効果」でした。 倫理的リーダーシップを切り口にホテルのハウスキーピング部門に務める従業員のストレスと離職意向を下げるメカリズムを明らかにすることに重きを置く研究です。

顧さんの発表内容に関して、熊本先生は、(1)倫理的リーダーシップの定義について、コンセンサスが取れているか。例えば、チップをもらうことないのに、評価されるサービスを提供している日本のサービス業における倫理的リーダーシップの定義は必ず欧米諸国と同じだと言い切れるか、(2)倫理的リーダシップを研究対象として絞られたが、リーダーシップはどのような基準に沿って分類されているか、(3)残っている従業員にはサバイバル・バイアがあるかどうか、(4)この研究の問題意識はどこから生まれてくるのか、という四つの質問をされました。これらの質問と顧さんの答えによって、顧さんの研究の構成と筋道が整理されました。その後、熊本先生は特に論文の正しい書き方を強調しました。研究デザインの面では、中西先生にも研究エヴィデンスの不足を指摘され、貴重なアドバイスをいただきました。

顧さんの研究で用いるデータについて、瀋丁昊さんは給料など他の変数が従業員の離職率に与える影響に対する考慮が欠けていると指摘しました。それに加え、松村さんは移民従業員と日本人従業員についての違いも考慮に入れるのではないかというコメントをしました。これらのコメントについて、顧さんは今の段階で離職に影響を与える他の要因を考慮に入れるつもりはないと述べましたが、秋山先生と熊本先生にこれらの要素をこの研究を展開する時に念頭に置く必要性を説明していただきました。