一橋大学

学生コメント(17)

2015年5月21日法学研究科

法学研究科法学・国際関係専攻修士課程2年 石井雅浩

こんにちは。今回は5月13日に行われたEUワークショップにおける法学研究科博士課程1年の菅沼さんによる「ドイツにおける宗教的侮辱表現」に関する研究報告について簡単なコメントをさせていただきます。

報告者の菅沼さんはこのテーマに関する報告をこれまでに修士課程在籍時からEUワークショップの場で度々なされてきました。今回の報告では、修士論文としてまとめられた研究成果に関するあらましと研究の今後の展望について報告をなされました。また、この内容を基に論文投稿を予定されており、論文投稿に関する視点からも出席者からのコメントがなされました。

菅沼さんの研究は、ドイツ刑法166条信条冒涜罪を足掛かりにドイツにおける関係する判例の研究とデンマークで2005年に起きたムハンマド風刺画事件への同条文のあてはめをなされています。構成要件である「冒涜」「公共の平穏を害する」が成り立つか否かに関するドイツ国内の刑法学および憲法学の法学者による応答状況などの紹介をなさり、日本における表現の自由と公共の平穏との衝突の可能性とその影響に関する見解を発表されました。

報告後の参加者からのコメントでは、事例として紹介された判例に関する事実関係の確認、信条冒涜罪の適用に関する件数の確認、「世界観団体」などの個別の表現の確認、立法時の時代背景などに関する影響の確認、他国における事例やEUレベルでの司法的判断の有無の確認など幅広く質疑応答が交わされました。

フランスのシャルリー・エプド誌の掲載した風刺画に対する襲撃事件の発生やそれに対する何百万人もの人々による追悼の行進などの事態を受け、今後、各国で信条と表現を巡る議論がさらに展開されていくことが見込まれます。侮蔑や冒涜を法の視点から研究されていくことになる菅沼さんの今後の研究とその成果に関する報告が期待されます。