EUワークショップ 2025年7月16日 報告者コメント
2025年7月29日中西優美子(Yumiko NAKANISHI)
社会学研究科修士2年
太田駿
本発表のテーマは「ジュゼッペ・マッツィーニのアソシエーション論――フランス初期社会主義者に着目して――」であり、「マッツィーニにおけるフランス社会主義からのアソシエーション概念の受容とその展開」をリサーチ・クエスチョンとして設定した。
アソシエーションという概念は19世紀初期のフランスで盛んに議論された概念である。特に1830年の七月革命以降、失業や貧困などの社会問題や、個人主義や利己主義の蔓延によるモラルの低下が問題視されており、アソシエーションはそれらの問題を乗り越える社会の原理として提示されていった。代表的な論者としては、サン=シモンの意思を受け継いだサン=シモン主義者やピエール・ルルーなど、初期社会主義者が挙げられる。
一方で、マッツィーニの思想においてもアソシエーションという概念が見られる。マッツィーニの政治組織「青年イタリア」や「青年ヨーロッパ」の政治綱領や規約にも「アソシエーション」という語が使用されている。フランスと文脈は異なるが、マッツィーニもイタリアの独立と統一をめぐって新たな社会の原理を探求していたのであり、その原理として提示されたのがアソシエーションであった。実際にマッツィーニは1831年から33年にかけてフランス・マルセイユに滞在し、サン=シモン主義者との交流があったことからも、彼らから思想的な影響を受けたことは推察できる。
マッツィーニのアソシエーションに関して、その究極の目的は人類のアソシエーションであり、それを構成するのが諸国家である。その諸国家も自由で平等な国民からなるアソシエーションである、というように、マッツィーニにおいては複数の次元でのアソシエーション概念が見られる。
先行研究においてマッツィーニの思想のサン=シモン、サン=シモン主義の影響がたびたび指摘されていたが、その内実に関して十分に議論されているとは言えない。本研究はこうしたフランス社会主義、特にアソシエーションの概念に着目し、マッツィーニがそれをどのように受容し、自身の思想に取り込み、また展開していったのかを明らかにすることを目指す。
質疑応答では、参加者の皆さんからたくさんのコメントをいただいた。ナショナリズムや共和主義とアソシエーションとの関係やマッツィーニ自身における「ヨーロッパ」と「人類」との関係性や認識の問題など、議論を進める上で重要な論点を提示していただいた。なかでも、フランス社会思想とマッツィーニの思想をどのように区別するのかという問いは本研究において重要な問題であるとともに、避けては通れない問題である。