一橋大学

EUワークショップ 2024年12月18日 報告者西村朱央さんのコメント

2025年1月14日中西優美子(Yumiko NAKANISHI)

国際・公共政策大学院

グローバル・ガバナンスプログラム

1年

PM24G011

西村 朱央

今回の報告では、「北極海における海底ケーブルに対する安全保障上の脅威」をテーマに、リサーチクエスチョンとして「なぜ北極における海底ケーブルが戦略的に重要であると考えられているのか?」を設定した。また、このクエスチョンを明らかにするために、以下の3つのサブクエスチョンとして設定した。

  1. 気候変動に伴い、マッキンダーの地政学理論はどのように修正されるべきか?
  2. 地政学的観点から、海底ケーブルはどのような脅威にさらされているか?
  3. 北極における海底ケーブルへの脅威として考えられるものは何か?

 

本研究を行う学術的意義としては、日本における北極の議論が主に気候変動や経済面からなされている中、安全保障の観点から分析を行うことが挙げられる。また、社会的意義としては、海底ケーブルが現代の通信において不可欠なインフラであることから、海底ケーブルに対する脅威を整理・分析することは海底ケーブルの安全確保に繋がると考えられる。

 

研究の背景として、近年、北極海に海底ケーブルを敷設する利点が取り上げられる一方、実際にその敷設に伴うリスクや脅威についての議論が不足している現状がある。そこで、本研究では、北極海に海底ケーブルを敷設することによる脅威を明らかにするため、地政学的理論を活用し、特に脆弱な地域の特定を行う他、過去に北極圏で海底ケーブルが切断された事例の調査を行い、その切断の背景を分析する。また、北極圏に関心を持つ国や組織の政策を分析することにより、将来的な北極海底ケーブル戦略と対応策について考察することを目的としている。

 

報告後の質疑応答では、リサーチクエスチョンとサブクエスチョンとの整合性が不足している点や、3点目のサブクエスチョンでは北極特有の脅威に焦点を当てるべきだという指摘を受けた。また、安全保障、北極、海底ケーブルという3つのテーマを同時に議論しようとしたがために議論が混乱していること、さらに、海底ケーブルを北極に敷設することがリスクマネジメントの一環であることを踏まえ、「脅威」ではなく「リスク」を認識し、そのリスクが顕在化する要因について考察するべきだというアドバイスを頂いた。

 

今後は、頂いた指摘を基に研究を整理し、北極における安全保障上の課題に関する研究を進めていきたい。