一橋大学

EUワークショップ 2017年6月21日 報告者コメント

2017年6月21日中西優美子(Yumiko NAKANISHI)

 

2017621 EUワークショップ報告者コメント

 

 

 

法学研究科博士後期課程 吉本文

 

 

 

6月21日のEUワークショップでは、「水平的整合性に関する一考察――欧州司法裁判所による理解に着目して――」という題目の報告させていただいた。報告では、軽小火器事件判決(Case C-91/05, European Commission v. Council of the European Union, ECLI:EU:C:2008:288)及びEU・タンザニア海賊引き渡し協定事件判決(Case C-263/14, European Parliament v. Council of the European Union, ECLI:EU:C:2016:435)において、どの文書に規定された整合性(consistency)がどのような意味を付与されて判決理由とされたのかを比較分析した。これによって、第一に、同裁判所は、EU基本条約に規定された整合性確保義務に依拠する傾向にあることを、第二に、整合性の意味が両判決において異なることを結論づけた。この結論によって、従来から存在していた、整合性に関する法的観点からの研究への疑義に回答した。

 

 

本報告に対しては、様々なコメントをいただいた。特に、報告者が自ら整合性を定義する必要性のご指摘や、今後報告者はEU内諸機関間における力関係を検討するのか、または整合性の具体的内容をリストアップしていくのかといった、研究の方向性に関するご質問をいただいた。報告の冒頭で博士論文構想に触れたが不十分であったことから、いただいたコメントを参考に、次回までにより詳細な構想を提示することができるよう研究対象を広げていきたい。