一橋大学

EUワークショップ 報告者(仮名Bさん)コメント(2025/05/28)

2025年7月4日中西優美子(Yumiko NAKANISHI)

EUワークショップ 報告者コメント(2025/05/28)

本発表のテーマは、「ヴェローナ原則とその評価の検討-英愛新3か国における立法過程から-」であった。

ヴェローナ原則とはISS(International Social Service)というNGOが代理出産により出生した子どもの権利保護を主目的として作成した文章である。国連児童の権利委員会からの支持声明も付されている。法的な文章ではないため、代理出産における子どもの権利保護のための権威あるガイドラインというべき立場にある。

現在、ヴェローナ原則が公表された2021年から既に4年近くが経過し、各国の代理出産に関連する立法や法律改正の過程でのヴェローナ原則への言及がみられる。主たるものとしては、イギリス、アイルランド、ニュージーランドが挙げられる。これらの国での議論を検討することで、ヴェローナ原則上で期待されていた国家における立法を通じて代理出産を通じて出生した子どもの権利を保護する役割が果たされているかを明らかにすること、及び法的な文章ではないヴェローナ原則が各国でどのような評価を受けているかを明らかにすることの2点を目的とした調査を行っている。そして、この調査を基に、ヴェローナ原則に対する総括的な評価を行うことが自分の研究の方針である。

本発表では、調査の現状を発表し、今後の方針へのフィードバックを受けることが主たる目的であった。この点、質疑応答において、ヴェローナ原則の詳説のパートでヴェローナ原則の各原則を先行研究に基づかず、自分の物差しでカテゴライズすべきというご指摘や実際に議論の結果立法された法律の規定とヴェローナ原則を比較し、ヴェローナ原則内の普遍性や実体を明らかにするというご指摘など今後の研究方針を考えるにあたって有益なアドバイスが得られた。よって、本発表における目的は達成されたと言えよう。