一橋大学

5月11日 EUワークショップ 報告

2016年5月22日中西優美子(Yumiko NAKANISHI)

EUワークショップ 2016511日 報告者

法学研究科博士1年 葉懿芳

法学研究科博士1年 葉懿芳ヨウイホウ)と申します。511日のEUワークショップにおいて報告の機会をいただき、これまでの研究状況と博士後期課程における研究計画について報告いたしました。

これまでの研究状況は修士論文を中心に報告させていただきました。テーマ「国際人権犯罪における第三国の司法能力と普遍的管轄権-ベルギーとスペインの国内法を中心-」です。

国際人権犯罪、とりわけジェノサイド、戦争犯罪、人道に対する罪と、拷問における、伝統的な関連性のない第三国が行う管轄権、いわゆる普遍的管轄権について、いかに被疑者を国内裁判所に連れて来て、審理を行ってきたかを国家の司法能力の視点から分析を行いました。本論文おける司法能力とは、国内裁判所が予備審問段階からの捜査、出頭命令や逮捕状の発給など、それに公判と執行までの手続きを遂行する権限。本論文は管轄権行使にあたって第三国(国内裁判所)の司法能力の効果を検討するものの、管轄権を行使した後の段階で行う、犯罪事実の確定や証拠能力の証明について論じません。

研究結果として、第三国の管轄権により拘束される対象は、当第三国や犯罪地以外の国に移住した移民と難民、また第三国の司法権限に属する領域に自ら入った者に限ります。以上の結果を踏まえて、博士課程では、国際人権罪を犯した移民や難民に対する第三国の法政策および国際・地域・国内法の相互作用の下で、それらの者の法的地位について、研究を深めたいと考えています。

EUワークショップの先生及び参加者の方々からは、国際法の国内適用・内在化や、普遍的管轄権の行使の対象の区別へのコメントなどを通じて、非常に有益な示唆を得ました。確かにこれまでの研究では、国際法・地域条約・国内法の関連性を検討していなかったため、必ずしも充実した研究結果を得たと言えず、今回参加者の方々からいただいたコメントを活かして、研究をいっそう進めてまいりたいと思います。