一橋大学

2018年7月11日 EUワークショップ報告者コメント

2018年7月13日中西優美子(Yumiko NAKANISHI)

 

EUワークショップ 2018711日 報告者

 

法学研究科博士3年 葉懿芳

 

法学研究科博士3年 葉懿芳(ヨウイホウ)と申します。711EUワークショップにおいて報告の機会をいただき、博士後期課程における研究計画について報告いたしました。研究テーマは国際刑事司法の実現における主権国家と国際刑事法廷の相互関係であり、とりわけ国際刑事裁判所における補完性原則と受理許容性審査を中心に報告させていただきました

 

博士課程一年においての研究は、当第三国における国際人権犯罪を犯したまたは容疑がある庇護申請者に対する、法的不安定な現状をリサーチペーパーにまとめました。博士課程二年においては、国際刑事法廷とりわけ国際刑事裁判所(ICC)を中心に訴追手続きについて模擬裁判の演習を通じて全般的把握した。これからの研究は、国際刑事司法の実施における主権国家と国際刑事法廷の役割分担に管轄権の行使の観点から検討を行う。検討対象はICC規程の補完性原則やまた国家間の普遍的管轄権にとどまらず、多元的規範主体における管轄権行使をより包括的、原理的に解釈できる原則を洗い出すことを目標にします。今回の研究関心は、補完性原則の実現について、ICC管轄権行使の決定に、実務上のアプローチおよび問題点である。4つの判決:ウガンダのコーニ事件、DRCのカタンガ事件、ケニアのルト事件、とリビアのガッダフィ事件を使い、受理許容性の解釈適用を検討します。

 

ICC上訴裁判部による二段階審査の法理:刑事管轄権の競合は存在しないと判断したら、それだけで受理許容性を持つ。さらに進んで「真に行う意思又は能力」の判断に進む必要がないと考えられます。但しウガンダのコニー事件やDRCのカタンガ事件は、管轄権を持つ国家が無活動状態(inaction)のままで事件を自らICCに付託しているため、刑事管轄権の競合がすらいないと判断された。ケニアのルト事件まで刑事管轄権の競合の審査行っていなかった。また、ケニアのルト事件の上訴審で提示された「実質的同一の行為」の認定は必ずしも明確であると言えない上、異議申立た国家に分な程度の特定性と証明価値を持つ証拠の提出などICCローマ規程上明記していない責任を求めるのは疑問が残ります。補完性原則に基づいて、受理許容性審査はICC自身が管轄権行使の可否確認である。こうした審査においては、伝統的に管轄権を有する国(犯罪地国または被疑者出身国)の管轄権行使について、その内容がICCの求める基準に満たすか否かをICCが評価することになりますが、果たして適正であるかどうか再検討しなければならなりません。

 

EUワークショッ参加者の方々からは、ICCの受理許容性審査の独立性や非締約国のリビアに対してそれくらいの拘束力を持つとかについて、質問をいただきました。また、中西先生に研究範囲の再確認の質問を頂き、一層に進めてまいりたいと思います。