2018年5月9日 EUワークショップ 報告者コメント
2018年7月12日中西優美子(Yumiko NAKANISHI)
法学研究科 法学・国際関係専攻 博士後期課程
石井雅浩
2018年5月9日にEUワークショップにて行った「EUエネルギー同盟とグローバル・エネルギー・ガバナンス」と題する発表について報告する。今回の報告では、分析枠組や分析概念の有効性について、コメントを頂いた。
報告の中心的な関心は、エネルギー同盟の導入がEUの対外エネルギー政策、グローバルなエネルギー・ガバナンスへの関与の在り方に変化を生んでいるのか、という点においた。この関心に対応する現状確認型のリサーチクエスチョンを設定し、EUとグローバル・エネルギー・ガバナンスの関係性を、アクターとしてのEUの視座から、把握することを試みた。
EUがどのように関与を行っているのかについて、理念的にボトムアップ型とトップダウン型という認識枠組を当てはめることで、本報告はEUが活用している外交手段の内容とその特徴を、先行研究を踏まえながら、把握することを試みた。1つは域外化(externalization)という特性と結びつくものであり、EUのエネルギー市場が文字通りEUの域外に浸透していく側面から把握される。域外化には、影響力の限界も指摘される一方、第三国の政府と企業の行動は必ずしも一致しないという指摘がある。もう1つは、国際標準・基準化を進めようとする特性と結びつくものであり、マルチの条約や二国間協定において、中心的に取り組まれている領域があることを確認した。
これらの特性が、どのような形で政策文書から読み取ることが可能であるのかを、エネルギー同盟に関わるコミュニケーションや理事会結論文書、作業文書等を基にして把握を試み、暫定的な報告を行った。具体的には、エネルギー同盟コミュニケとそのロードマップにおいて示された域外エネルギー・気候政策の具体的な8つの行動内容を評価基準として、進捗状況を把握することを試みた。
結果として、8つの行動内容それぞれにおいて多くの進展が2015年2月のコミュニケ公表以来みられていた。エネルギー共同体では統合の深化や拡大に関わる動向が確認できた。他方で、エネルギー憲章では国際エネルギー憲章が政治レベルで採択されたものの、その影響や意義については抑制的な検討を要することも確認された。このようなソフトローとして進む動きとEUの関係性については、更なる検証を要し、今後の課題となった。これらのEUによる関与は、既存の政策からの継続性・一貫性の上にあるものであることを把握でき、その大きな流れはエネルギー同盟という政策概念の導入を経ても変わらずにあることが確認された。こうした中で、政策形成過程において、内部に設置された組織や会議の役割に関わる検討を進める必要性が強く認識された。
報告後の質疑応答では、分析概念に対して様々なコメントを頂き、修正を行う上での重要な指摘を頂くことが出来た。また、今後の課題に関わる部分についての重要な指摘も頂くことができ、多くの示唆を得ることが出来た。