2017年7月19日 EUワークショップ コメンテーター報告
2017年7月20日中西優美子(Yumiko NAKANISHI)
コメンテーター報告
法学研究科 吉本文
今期最終回となる7月19日5限のEUワークショップにおいては、3名の学生が報告しました。コメンテーターとして以下の通り報告します。
まず、菅沼さんが、ドイツにおける「憲法の前提」論と宗教の自由について報告しました。特に、ベッケンフェルデ、ハーバーマス及びメラース等の既存の議論の展開を追った内容でした。報告後には多くの質問がなされ、例えば、ドイツと比較して宗教分離に厳格なフランスに関する質問がなされました。また、法学以外の観点からは、人権思想(または「個」の思想)がいつから宗教の影響を受けないものになったのかといった質問が挙がりました。
次に、奈良さんが、重国籍をめぐる国際的な動向とフランスでの対応について報告しました。国籍に関する諸条約の動きとフランス国内における二重国籍に関する対応を比較し、フランスは二重国籍に対し寛容な姿勢をとってきたが、昨今テロの影響を受けて方向転換の兆しがみられる旨を明らかにされていました。奈良さんへの報告に対しては、昨今フランスにおいて二重国籍が問題となってきているのは、二重国籍者の一部のみがテロに拘っているからである点について指摘がありました。また、法学の観点からは、条約の読み方について指摘がなされました。
最後に、吉村さんが、テロリズム対策に関する安保理の活動の適正化の観点から、安保理のアカウンタビリティーの向上について報告しました。アカウンタビリティーという用語について、安保理のアカウンタビリティーと金融用語としてのアカウンタビリティーの相違についての質問がなされ、両者は異なるという可能性が示唆されました。また、制裁手続きのどの過程におけるアカウンタビリティーを指しているのか、定義づけや射程の確定についても問われました。
以上の通り、3名とも自身の研究分野の外からの質問が多くなされ、活発な議論がなされた点が印象的でした。