一橋大学

2017年5月31日 EUワークショップ

2017年6月14日中西優美子(Yumiko NAKANISHI)

 

EUワークショップ 2017531日 報告者

 

法学研究科博士1年 葉懿芳

 

法学研究科博士2年 葉懿芳ヨウイホウ)と申します。531EUワークショップにおいて報告の機会をいただき、博士後期課程における研究計画について報告いたしました。研究テーマは国際人権犯罪の刑罰における国家の役割である。

 

修士論文において取り上げたベルギーとスペインの事例研究は、第三国の普遍的管轄権の行使をめぐる論争について、司法能力の観点から検討したものである。博士課程一年においての研究は、当第三国(EU加盟国)における国際犯罪を犯したまたは容疑がある庇護申請者に対する、法的不安定な現状をリサーチペーパーにまとめた。これまでの研究は、当事国でない第三国による責任追及の視点から分析を行ったものの、国際犯罪の刑罰における当事国の責任及び国際刑事法廷の実施、とりわけ国際刑事裁判所(ICC)などについての検討は十分に示すことができなかったため、その点についても留意して研究を進める。

 

これからの研究は、まず国際犯罪(コア・クライム)における処罰権は3つの規範的主体間の認識はどう位置付けの問題意識を念頭に置いて、処罰権を行使する法的義務、権利および法原則、とりわけ強行規範と対世的義務の拘束力を分析し、規範的主体の実定法上の役割、その限界を示す。そして、超国家的な機関による国際社会の処罰権を行使するための試しや活動のうち、どんな措置をどの程度に受け入れることができるのかに関する個別主権国家の判断に注目する。これらの判断の集積は一般国際法と国際刑事法の実質的法源を構成し、それがこれからの国際社会における国家の新しい役割を示すことになろう。

 

また、中西先生からEUの刑事政策について、EU運営条約第42条と352条にEUの権限より拡大できる可能性があるという情報をいただき、EU将来的な役割も研究発展性の範囲内と思う。ただし、EUワークショップの先生及び参加者の方々からの指摘の通り、ユーロ・クライムに対してEU法上EU権限拡大の理由とコア・クライムに対して国際刑事法の発展とは異なる文脈であり、博士論文の主なの視点はEU法に基づくものではないため、分析の大筋からズレないようにより注意しなければならない。