一橋大学

2017年7月19日 報告者コメント

2017年7月21日中西優美子(Yumiko NAKANISHI)

 

2017719EUワークショップ報告者コメント

 

 

法学研究科 修士課程 吉村真央

 

 

今回の報告では、「テロリズム対策に関する安保理の活動の適正化―安保理のアカウンタビリティーの向上を通じて」と題して、修士論文の構想を報告させて頂いた。

 

 

報告ではまず、冷戦構造の崩壊に伴って各地で噴出した国際問題に対応するため、安保理が活動を拡大していったことに触れ、国連憲章起草時に想定されていた、警察的・執行的活動以外の活動も行うようになり、中でも特に、911テロを契機として、テロ対策のために安保理はその活動を拡大していったことを説明した。そういった活動が、安保理に与えられた権限を踰越するのではないかといった懸念が生じたことが安保理の「アカウンタビリティー」の要請につながってきたことを指摘した。

 

次に安保理の「狙い撃ち制裁」について説明し、そこで議論となっている、安保理に要請される「アカウンタビリティー」の定義づけについて若干のコメントをした。様々な分野において論じられている「アカウンタビリティー」の最大公約数的な共通項を安保理の活動の文脈にあてはめると、「安保理(とその補助機関)が、その活動によって影響を受ける者に対して自身の行動に関して説明する責任があること、そして安保理の活動によって影響を受ける者からの問い合わせに対し、安保理(とその補助機関)が回答をすること」を指すと考えられるが、ここでの「安保理」は機関としての安保理(とその補助機関)なのか、各理事国なのか、また、安保理によって影響を受ける者とは、国家なのか個人なのか、より具体的に定義する必要性を今後の課題として示した。

 

 

分析の射程や用語の定義の仕方に関して、先生方・先輩方から多くのコメントを頂き、とても参考になった。特に金融分野でのアカウンタビリティーは、その機関に付与された独立性に由来するものであるとの指摘を受け、安保理のアカウンタビリティーは何から由来するのか、考える必要性を感じた。また、制裁手続きのどの部分についてアプローチしたいのか、区別して分析することの必要性も指摘して頂いた。