一橋大学

報告者コメント(2015年11月4日EUワークショップ)

2015年11月5日中西優美子(Yumiko NAKANISHI)

国際・公共政策大学院、修士2年、葉懿芳(ヨウイホウ)と申します。114日のEUワークショップにおいて報告の機会をいただき、修士論文研究計画について報告いたしました。

修士論文のトッピングは「域外重大人権侵害に対する普遍的管轄権行使―ベルギー・スペイン関連法を中心に」。今回の報告では、普遍管轄権の行使条件に巡る国際法的側面を中心に報告いたしました。

普遍的管轄権の行使対象は集団殺害罪、人道に対する罪、戦争犯罪および拷問である。こういった国際犯罪が国内司法システムに審理しても、国際法またほ国際組織の見解に全く影響されないとは思わない。例えば、条約義務に違反しない、国際司法組織の判決に尊重しのが国際社会に国家の基本責任と言えるであろう。

主権国家併存の国家間関係の下、刑事裁判権の設定・執行は国家主権の中核ともいえ、中央集権的な管轄権調整制度を欠く国際社会では普遍的管轄権の行使は散発的なものとなりがちである。尚且、普遍的管轄権を定義する権威ある国際的文書が存在しないとして、国際裁判例(以下、ICJは普遍的管轄権をどのように取り扱っているのか。この点、ICJ所は現在まで国家の普遍的管轄権の行使の妥当性について直接的な見解を示していない。

ICJにおいては、重大な国際犯罪の容疑の掛けられた現役の政府高官に対して国家が普遍的管轄権を行使できるのか、つまり普遍的管轄権行使の対象となった現役国家元首と現役国務大臣の享有する特権免除の問題が取り上げられている。さらに、ICJにおける普遍的管轄権に関する事件として、訴追または引渡し義務について争っている事件もある。また、普遍的管轄権の行使によって、地域間組織の対話AU-EUを促進したこともある。EUは国際重大人権侵害に対する司法政策を会員国に任せているけれども、EUはこの対話を機に、AU加盟国の司法関連の能力開発に協力し、例えばセネガルの特殊アフリカ法廷の資金面の援助をしている。

EUワークショップの参加者の方々からは、国家管轄権と国際社会の反応をめぐる問題状況へのコメントなどを通じて、非常に有益な示唆を得ました。普遍的管轄権の行使条件をめぐっては、一致した見解がないと思われ、国内司法と国際社会・国際法上の関係も注目する必要があると思う。今回参加者の方々からいただいたコメントを活かして、研究をいっそう進めてまいりたいと思います。