一橋大学

EUワークショップ・学生コメント(2015年6月17日分)

2015年6月26日法学研究科

こんにちは。法学研究科修士1年の川上愛です。

2015年6月17日に行われた周さんの研究報告について稚拙ながらもコメントを書かせていただきます。企業統合規制の欧中比較研究の5回目の報告は、中国の問題解消手続についてEUの同手続きと比較した上で、「独立運営」という中国独特の措置に注目し、その措置が取られたケースを元に「独立運営」の意味と効果に焦点を当てていました。

まず前回までの概要として、企業の混合合併は時として競争上の懸念が生じる場合があり、その時にはこの合併に対して規制(問題解消措置)が課せられますが、その規制の仕方にはEUと中国では差異があることが明らかになりました。まず、EUと中国両者に共通する行為的問題解消措置(Behavioral Remedies)と構造的問題解消措置(Structured Remedies)があります。

次に、具体的な事例として前回の発表(2014年11月)で取り上げたネスレ事件では、EU競争法における問題解消措置として資産分割という行為的問題解消措置が取られたことを確認し、中国おいても同様な措置は国内法によって規定が設けられていることを明らかにしました。

本報告では、先ほどあげた行為的問題解消措置や構造的問題解消措置とは別のカテゴリーとしての特別措置が中国ではよく見られることを紹介しました。丸紅社によるガビロン社の買収事例では「独立運営」という規制が課されました。「独立運営」とは行為的問題解消措置と構造的問題解消措置を組み合わせたものと言うことができ、合併企業間のファイアーウォールとしての働きを果たすものと考えられます。

更に中国における規制審査水準も多様化し急速に向上していることも明らかになりました。高いシェアのみで違法性が推定しうる慣行から関連市場の精緻化や、バイイングパワー、参入障壁などにも言及されるという変化が、グーグル社とインベブ社の合併事例による「独立運営」措置には見られました。

報告後の議論では、農業やスマホといった市場の違いにより、その市場の予測難易度も変わり措置内容が変わるのではないかという指摘がなされました。また、「独立運営」命令がされた場合でもホールディング会社という形態は可能なのかという質問に対しては、可能であると周さんから回答されました。

私は経済には全く疎いためEUとは別の発展を遂げている中国の合併規制について、すべてが新しく、この独自の進化がどのように進むのか大変興味深く感じました。次回の発表を心待ちにしております。