一橋大学

EUワークショップ 2017年11月15日 コメント

2017年11月16日中西優美子(Yumiko NAKANISHI)

 

法学研究科 修士課程

 

吉村真央

 

 

今回は、1115日に行われたEUワークショップにおける、法学研究科博士後期課程の菅沼さんによる「オーストリアにおける教義誹謗罪(刑法188条)の序論的考察」報告について、コメンテーターとして報告させていただきます。

 

 

菅沼さんは、ドイツにおける信条冒涜罪(刑法166条)を憲法学の観点から研究しています。今回は、ドイツにおける信条冒涜罪にあたる、オーストリアの教義誹謗罪について、刑法の改正過程と、実際にその罪に問われた裁判例としてムハンマド侮辱事件を素材として、検討されました。

 

報告後の質疑応答では、ムハンマド侮辱事件では、欧州人権条約の表現の自由の制限事由のうち、今回はどれに当てはまったのかという質問や、レジュメの中で出てきた「ポリツァイ事項」という言葉の意味についての質問が出ました。また、中西先生からは、オーストリア憲法の法源に関して、「法律と同ランクの条約中に含まれる憲法ランクの規定」はどれかを決定するための線引きはどこにあるのか、という質問が出されました。また、秋山先生からは、今回のムハンマド侮辱事件と菅沼さんがこれまで研究してきたオットー・プレミンガー対オーストリア事件とを比較する積極的な意義があるのかという指摘がありました。

 

菅沼さんの研究は、日本のヘイトスピーチ問題への示唆を与えうる、興味深いものであると思われます。比較研究の範囲やその意義をより明確にして、今後の研究の更なる発展が望まれます。