小川英治編『ユーロ圏危機と世界経済』東京大学出版会(2015年6月)
2015年7月3日中西優美子(Yumiko NAKANISHI)
現在、ギリシャ危機が正念場を迎えています。どうなっていくのか先が見通せない状況です。
これに関連する本、小川英治編『ユーロ圏危機と世界経済』(東京大学出版会)2015年6月に出版されました。
この出版を踏まえ、EUSIメールマガジン(2015年6月25日号)において、編者である小川先生により本の紹介がなされました。
小川先生は、EUワークショップの担当教員であり、EUSIの顧問もされています。
以下は、メールマガジンからの抜粋です。
「本書『ユーロ圏危機と世界経済 信認回復のための方策とアジアへの影響』は、
ユーロ圏危機がユーロ圏経済に及ぼした影響と様々な政策対応とともに、アジ
ア経済を含め世界経済に及ぼした影響をメインテーマとした。
このメインテーマの下に、8人の研究者が集まって、これらのユーロ圏危機に
関連する諸問題に対して考察を行った。8人のメンバーは、経済学者のみならず、
EU法を専門とする法学者、中西優美子教授(EUSI所長)も加わり、ユーロ圏危機
に対するEUの対応を経済学的・法学的両アプローチから考察した。
2009年10月の政権交代がトリガーとなって起こったギリシャの財政危機がポル
トガル、アイルランドなどに波及し、ユーロ圏危機に発展した。IMFも巻き込ん
で、ECBとEU全体で対応せざるを得ない状況となった。加えて、ユーロ圏危機
後の欧州安定メカニズムの設立・稼働や財政安定同盟や銀行同盟の設立などに
向けた取り組みが、再燃しつつある危機の火消しに回っている。ECBが2015年
3月より日米に対して周回遅れで量的金融緩和政策を開始し、その景気回復効果
及びデフレ突入に対する抑制効果が待ち望まれている。
一方、2014年10月に発表されたECBによる金融機関に対するストレス・テストで
25銀行で総額246億ユーロの資本不足が指摘された。今後、金融問題が深刻化
することのないよう、銀行同盟の3本の柱である、単一監督メカニズムと単一
破綻処理メカニズムと預金保険制度の設立・運用が注目される。
本書の前半では、ユーロ圏危機とその政策対応について考察が進められた。
そこでは、ユーロ圏における財政危機とその対応、金融危機としてのユーロ圏
危機、ユーロにおける金融規制とユーロ危機の影響、リスボン条約改正から
みるユーロ圏の金融危機とその対応について考察し、ユーロ圏それ自体が最適
通貨圏であるかどうかについて再検証を行った。
一方本書の後半では、ユーロ圏危機が世界のマクロ経済に及ぼす影響、アジア
のリアルセクターに及ぼす影響、そして、アジアの通貨に及ぼす影響について、
実際のデータを見ながら、考察が進められた。」
ぜひこの機会に読んでみられてはどうでしょうか。