EUワークショップ 2020年6月24日 報告者コメント
2020年6月24日中西優美子(Yumiko NAKANISHI)
EUワークショップ2020/06/24
報告者:小笠原宏輝(国際・公共政策大学院 (IPP) 1年)
IPP1年の小笠原です。EUワークショップでの報告は今回が初めてということもあり、本日は私の問題意識と研究方針を中心にお話させていただきました。現時点での研究のテーマは「国際法による宇宙空間の軍事的利用の規制」です。より具体的には衛星のデュアルユース問題や責任の帰属問題をどのように国際法で規律していくかについて研究しこうと考えています。以下ではまず私の問題意識について説明し、次に今後の研究の方針について簡単に紹介させていただこうと思います。
まず研究の前提となる問題意識についてです。宇宙空間の軍事安全保障上の重要性は1990年代以降、飛躍的に高まっているとされています。そうした中、既存の国際法(いわゆる宇宙5条約)では軍備管理・軍縮に関する規制が不十分であったことから、新たなルールの策定が模索されてきました。その中の一つが中国・ロシアによって提出されている「宇宙空間への兵器配置および宇宙空間物体に対する武力による威嚇または武力の行使の防止に関する条約草案( the Draft Treaty on the Prevention of the Placement of Weapons in Outer Space, the Threat or Use of Force against Outer Space Objects:PPWT草案)」です。同条約草案は宇宙兵器の配置や宇宙物体への武力行使を禁止しようとするものですが、米国と中露の対立から交渉は進んでいません。「責任の帰属先の特定が難しい」「『宇宙兵器』や『ASAT』の定義ができない」といった問題がこの対立をさらに深刻なものとしています。こうした状況に対し、EUを中心にソフトローによる規制が模索されるようになりました。そのEUにより2008年に策定された「宇宙行動規範」は日本を含む多くの国の支持をとりつけ、宇宙空間の活動を規律する新しいルールとして注目を集めました。しかし2015年以降会合が開かれておらず、なかなか議論の進展はみられていません。現在はCOPUOSで採択されたガイドラインの履行が促されているという状況です。
以上を前提に、今後の研究ではまず問題点を整理したうえで宇宙行動規範やガイドラインの国際法上の位置づけを分析し、その限界と可能性を明らかにしていこうと思います。またIPPの学生でもあるので、最終的には何らかの法政策提言につなげていければと考えています。
本日の報告に対しては、主に実証研究の具体的な方法や研究する上で参照すべき他の分野(貿易・海洋など)について質問・コメントをいただきました。また過去の事例(16-17世紀の海賊の取締など)との比較や国際政治の視座を取り込むことなども有用ではないかといったアドバイスもいただけました。こうした貴重なコメント・アドバイスをもとに今後の研究を進め、次回報告をより良いものにしたいと思います。