一橋大学

12月22日 コメンテーターの要約とコメント

2021年12月27日中西優美子(Yumiko NAKANISHI)

 

「訴訟差止命令(Anti-Suit Injunction)は日本企業に与える影響」

何耘鋭12月22日報告

コモン・ロー国家において、①当事者間は合意によって管轄条項を含む契約を締結したが、一方の当事者がこの管轄条項を違反して外国裁判所に訴訟を提起した場合、②外国裁判所での訴訟手続きが濫用的または過酷である場合、訴訟差止命令を下すことができる。それに対して、シビル・ロー国家において、訴訟差止命令の使用は司法上の主権を侵害することから、訴訟差止命令を認めないとする。

しかしながら、近年FRAND 宣言に関するコモン・ロー裁判所から訴訟差止命令が多くなるに伴い、シビル・ロー国家において、例えばドイツ、フランス裁判所は訴訟差止命令の差止命令(Anti Anti-Suit Injunctions)に関する判決を下したことがある。なお、中国はシビル・ロー国家としても、訴訟差止命令を下した。日本裁判所は訴訟差止命令を認めないが、今後日本が他国での訴訟差止命令戦争の影響を受けた場合、日本企業や裁判所はどのように対応すべきか、さらなる検討が必要な課題である。

コメント

中西先生は、中国の法制度の性質について確認した上で、コモン・ローのような条件を付けないと、訴訟差止命令を認めたら、法律が不安定になるではないかと疑問視されていました。秋山先生は、訴訟差止命令について、特許侵害の事例以外に他の事例が存在するか否かことを確認した上で、コモン・ローとシビル・ローを比較して、中国においてHuawei対Conversant事例をどう飲まれるか、日本の場合に参考になれるかについて考慮すべきだと助言しました。熊本先生は、コモン・ローにおいて、訴訟差止命令の要件について、契約関係ではない当事者間の特許侵害訴訟も注目すべきだと助言しました。