一橋大学

EUワークショップ 報告者コメント 2024年5月29日

2024年6月2日中西優美子(Yumiko NAKANISHI)

EUワークショップ 第一回報告                 発表日:5月29日

報告者:社会学研究科修士課程1年

太田駿

 

EUワークショップにおける研究では、19世紀イタリアの政治家・革命家ジュゼッペ・マッツィーニの政治思想とヨーロッパ統合思想との関連を研究テーマに定め、リサーチ・クエスチョンを「マッツィーニはヨーロッパ統合思想をどのように理解し、発展させたのか」と設定した。

 

今回の報告では、統合思想を分析する概念として古代ギリシア・ローマに起源を持つ「コスモポリタニズム」を取り上げ、特に「祖国」と「人類」の概念に着目しながら検討した。18世紀フランスにおいて、この概念が一方で人類への愛を強調する議論として発展し、他方ではフランスという祖国への愛を強調し、国民の一体性を促すとともにパトリオティズムが喚起された。

 

以上の議論を踏まえ、マッツィーニの思想とコスモポリタニズムとの関連を検討した。マッツィーニの思想においても「祖国」や「人類」の概念が登場するが、人類の進歩を究極的な目標に掲げるマッツィーニにおいて、祖国と人類は連続した概念として考えられ、祖国への愛が人類の愛へとつながっていった。したがって、マッツィーニの思想では、まず祖国への愛、すなわち祖国への奉仕を行うことが人類の進歩に寄与し、そうした活動を通じて個人は人類の一員であることを認識できるとされた。こうした点でマッツィーニの思想はコスモポリタニズムとは異なり、マッツィーニの思想の特徴を確認した。

 

報告後の質疑応答では、さまざまな質問・コメントをいただいた。特に、マッツィーニのコスモポリタニズムへの態度がどのようにヨーロッパ統合の思想へと繋がるのか、という指摘をいただいた。この指摘は自らが設定した問いに対する重要な観点(回答)であるにもかかわらず、発表内で言及できていなかったために口頭での回答となり、今回の報告の反省点である。また、マッツィーニの思想と当時の社会状況との関連や、キリスト教との関連、マッツィーニが使用する「人類」という言葉の射程についてなど、マッツィーニの思想をより理解するための多くの視点を挙げていただいた。今回いただいたコメントやアドバイスをもとに、今後の研究を進めていきたい。