EUワークショップ コメンテーターによるコメント 2025年5月28日
2025年6月11日中西優美子(Yumiko NAKANISHI)
EUワークショップ報告者へのコメント
PM24G011
西村朱央
今回のEUワークショップでは、Aさん(仮名)と新美さんから報告を頂いた。
Aさんは、代理出産が国際化している現状を背景に、ルールを定める必要性から国際NGOであるInternational Social Service(ISS)が2021年に作成した「ヴェローナ原則」に焦点を当てて研究をされている。
「ヴェローナ原則」を扱った日本語の先行研究として、早川眞一郎氏による「代理出産の規律に関する国際的動向―ISS作成の『ヴェローナ原則』について」が存在する。Aさんの研究では、本先行研究が概説的であることを踏まえ、ヴェローナ原則の詳細な解決およびヴェローナ原則が各国でどのように評価、実施されているのかを明らかにすることを目的とされている。
質疑では、①海外の先行研究の有無や既存の研究との差別化や、②「ヴェローナ原則」を子どもの権利保護のための原則として扱うのか、または親の責任として扱うのか、③ヴェローナ原則が参照されているか否かを如何に確認するか、④サンプルとする国家の選定について議論がなされた。
新美さんは、「なぜギリシャの政治エリートは、ハンガリーと異なりポピュラーの圧力がある中で、民主主義の制度を守ろうとしたのか?」をリサーチ・クエスチョンとして設定し、民主主義の堅持・後退の分岐点に立つギリシャとハンガリーの政治エリートの行動と理念に着目し、ポピュリズム圧力下での民主主義制度の脆弱性と耐久性を明らかにすることを目的として研究を進められている。
本研究では、Our World in Dataが提供するDemocracy indexを根拠に、ハンガリーでは民主主義が後退している一方、ギリシャでは経済危機に見舞われたにも拘わらず、制度破壊が抑止され、民主主義の機能が比較的保たれている点に着目がされている。
先行研究との関連としては、政治的エリートの行動や国際的な制約の働きかけが弱まれば民主主義が後退すると主張する先行研究をより深化すべく、民主主義の脆弱性の条件やエリートの行動と外的制約の観点から研究を行うことを目指されている。
質疑では、「ポピュリズム」や「民主主義」、「民主主義の後退」といった用語の定義や、歴史的背景や民主主義の発展度合いを鑑み、ギリシャとハンガリーを比較することが適切なのかといった指摘がされた他、EUの政治的なセーフティーネットとしての役割について議論がなされた。