一橋大学

EUワークショップ 2019年7月3日 コメンテーター

2019年7月3日中西優美子(Yumiko NAKANISHI)

 

EUワークショップ

 

コメンテーター:吉本

 

 

 

201973日 ホウ チンテイ さんの報告のコメント

 

 

ホウさんは、「日英の唯美主義文学に見られる美学の越境と回帰―ワイルドと谷崎を中心に―」というテーマで報告されました。日英間の唯美主義の相互影響という観点から、「ヴィクトリア朝の後半期のイギリスに越境した日本芸術美学のブームとジャパニズムは数年後、日本における西欧美学の最新技法の吸収より生み出された唯美主義文学にも影響を与えたと言えるか、仮にそうであれば、時間軸上での美学の相互的越境はより良い回帰に到達するためのプロセスであろうか」という問いをリサーチクエスチョンとして設定されました。今日の報告では、このリサーチクエスチョンに応える研究の一環として、日英における唯美主義文学と代表作家を紹介され、そのうえで、ワイルドのジャパニズムと谷崎のエキゾチシズムに関する作品を整理されました。

 

質疑応答では、まず、「文化の越境と回帰」の意味、及び、「耽美主義の技法」という際の「技法」の意味について問われました。「耽美主義」とは、私小説が巷に溢れている中でのこれに対置される精神態度であって、美を煎じ詰めて磨きをかけたもの(ミニマリズム等?)という理解ではないかという意見が出されました。また、耽美主義を研究するならば、英国ではなくフランス文学を対象とすべきではないかとのご指摘がなされました。また、オスカーワイルドはアイルランド人であり、彼の作品は英語で書かれているからといって英文学と言えるのかとのご指摘がありました。

 

ホウさんの研究分野(言語社会)については知らないことばかりでしたので、ご報告は大変勉強になりました。