一橋大学

EUワークショップ・コメンテーター(4)

2014年7月16日法学研究科

423日に行われたワークショップでの発表についてお伝えします。

発表担当は法学研究科M1の石井さんと商学研究科M1の楊さん。コメント担当は社会学研究科M2の加藤です。

今回はM1の参加者がEUワークショップでの研究構想を話す企画発表が行われました。

まず、法学研究科M1の石井さん。「ロシアとEUのエネルギー関係――EUの対内外エネルギー政策」という題目で構想が発表されました。

石井さんの構想は、冷戦期から現在に至るまでのEUのエネルギー政策の歴史的経緯を、特にロシアとの関係性について検討するものです。冷戦期の東西の対立構造の中にあっても、EUEC)諸国はロシアから安定的にエネルギー供給を受けていた点に着目し、この関係がどうして維持・発展できたのか、について調査を進める方針とのことです。

これに対して、参加者からは「現在のEU内でも、国によってロシアへのエネルギー依存度が異なる」ことや、研究テーマを「EUの政策の問題として扱うのか、EU-ロシア関係の問題として扱うのかによって視点が変わってくる」ことなどが指摘され、議論がかわされました。

冷戦終結後の混乱期を経てふたたび台頭するロシアに対しては、EU諸国の立場も一枚岩ではなく、深い分析が求められる興味深いテーマだと感じられました。

 

石井さんの次は、商学研究科M1の楊さん。「EU統合・拡大過程におけるロジスティクス業界の発展と課題」という題目で構想が発表されました。

楊さんの構想は、EUの発展に伴うヨーロッパのロジスティクス業界の変化を検討するものです。特に、運輸・交通に関するEUの共通政策に着目しその歴史的な展開を追うとともに、将来における効率的なロジスティクス体制構築の可能性を探っていくとのことです。またその過程で、実際のロジスティクス業者の事例分析を行うことも検討されています。

参加者からもさまざまな意見が提示されました。例えば「製品やサービスのやり取りに関する自由化と、労働者の移動に関する自由化の間にはギャップがある」ことが指摘され、「運搬サービスは国境を越えるが、労働者は国境で交代しなければならないため、積み替えの問題が生じる」といった事例が議論されました。

また、ロジスティクス業界の事例研究に関しては、「対象とする企業の選び方によって研究の方向性が大きく変わってくる」ことも指摘されました。

前半の石井さんの発表、後半の楊さんの発表ともに、活発な議論が交わされました。こうしたワークショップの議論を踏まえ、どのように研究が具体化されるか、次回の報告が期待されます。