一橋大学

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2015年1月15日法学研究科

今回のEUワークショップは、法学研究科修士1年の石井さんと社会学研究科修士1年の上野さんの2名による報告でした。まず石井さんは、ロシア(加えて当時のソ連)とEUのエネルギー貿易や政策、エネルギーのパイプライン建設に関する事例などを国際関係や外交の歴史的な観点から検証することを目的として、今回は研究の位置づけや東西貿易を巡る米国の対欧州政策について、山本武彦先生や黒川修司先生などの先生方による先行研究を参考にしながら報告をして下さいました。その中では、貿易面での禁輸措置や経済制裁、安全保障の観点において、政治面や軍事面で介入するべきなのか、また冷戦期の各国のパワーバランスの検証や冷戦構造の問い直しに関して、示唆を与えるような議論が行われました。

次に上野さんは、「EUという観点から見た、バルセロナ市民によるシティズンシップの社会的構築とその制度的・歴史的条件」というタイトルのもと、クリスチャン・ヨプケの先行研究や、上野さん自身が昨年11月から約6週間に渡って、スペイン・バルセロナのシンクタンクであるCIDOBにおいて客員研究員として調査を行った経験を中心に報告をして下さいました。その中では、現地の研究者やバルセロナにおける移民統合政策の象徴的な事例として「Xarxa BCN Antirumorプロジェクト」の参加者などから、指導を受けたことや聞き取りを行った内容を扱っていました。加えて当該プロジェクトには各種アソシエーションが存在し、バルセロナ人の特徴や定義、そして参加希望者の地位に関して差別しないという考え方から、それらに参加する条件が特にないとのことでした。以上を踏まえ、プロジェクトの成功の要件やその評価の仕方、また参加者の感情が長期的に変化してしまうことを防ぐための戦略(例として、Anti-Anti rumorにならないための戦略)はどのようなものなのか、また以上の議論のポイントから見えてくる移民統合政策の展望はどのように描けるかなどについて、議論が行われました。2名のいずれの報告においても、本ワークショップの時間を大きく過ぎるほどの活発な議論が交わされていました。

(今西雄也)