一橋大学

EUワークショップ 2019年6月26日 報告者によるコメント

2019年6月28日中西優美子(Yumiko NAKANISHI)

 

EU ワークショップ報告者コメント

 

経済学研究科 修士1

 

謝 華峰

 

2019626日のEU ワークショップで報告機会をいただき、「環境規制が企業の競争力に与える影響」と題して、このテーマを研究する際に基礎とされる「ポーター仮説」についてご報告いたしました。

 

経済発展に伴い、水質汚染、大気汚染、地球温暖化などの様々な環境問題が起こっています。環境保全は各国にとって重要な課題であり、環境規制が数多くの国で実施されています。ここでよく問われるのは、環境規制が企業の競争力にどのような影響を与えるのかという質問です。一般的には、環境規制の導入は企業にとって増加費用となるため、生産性を低下させ競争力を失うと考えられていますが、Poterより提案された「ポーター仮説」によれば、その通説と異なり、適切に設計された環境規制は、費用逓減・品質向上につながる技術革新を刺激し、その結果、国内企業は国際市場において競争上の優位を獲得し、他方で国内産業の生産性も向上する可能性があるという見解もありました。多くの経済学者が「ポーター仮説」に対して検証してきて、研究の結果からみると、仮説に対して肯定的な研究結果がありますが、否定的な研究結果もあります。環境規制が企業の競争力にどのような影響を与えるのかについて、私は非常に関心を持っており、それについて実証的に考察することを目的としています。

 

上記のテーマを研究するために、基礎とされる理論の一つは前述した「ポーター仮説」です。本報告では、主に環境規制の適切性とPoterの競争戦略の概念に注目しながら、環境規制による企業の競争力への影響を整理してきました。まず、環境規制の適切性に関して、望ましい環境規制の設計には、①技術基準を設定する規制ではなく、汚染排出に対する規制とすべきである、②市場メカニズムを利用した規制を採用すべきである、③不確実性を排除した規制を採用すべきであるという3つの条件があります。次に、ダイヤモンド・フレームワーク、競争の「5つの力」と2つの戦略優位のタイプからPoterの競争戦略の概念をまとめ、さらにこれらの概念を関連しながら環境規制による企業競争力への影響を整理してきました。

 

報告後の質問応答では、先生方々と先輩方々から貴重なコメントをいただき、非常に参考になりました。なかでは、国と国を比較しながら、また、特定の環境規制を対象とし、環境規制による企業の競争力への影響を研究するアドバイスをいただき、このような研究方向に進めば、よりスムーズに研究を進められるのではないかと思いました。そして、株主、労働組合と経営者がそれぞれイノベーションに対する異なる態度や意見を持っているというコメントに関しましては、確かに、環境規制による企業の競争力への影響を研究する際に、株主、労働組合と経営者がそれぞれイノベーションに与える影響を考慮したほうがいいと思いました。