一橋大学

EUワークショップ 報告者コメント 2016年11月16日

2016年12月2日中西優美子(Yumiko NAKANISHI)

EUワークショップ 20161117日 報告者

法学研究科博士1年 葉懿芳

法学研究科博士1年 葉懿芳ヨウイホウ)と申します。1117日のEUワークショップにおいて報告の機会をいただき、博士後期課程における研究計画について報告いたしました。研究テーマは国際人権犯罪の刑罰における国家の役割である。

本研究全体の目的は、刑法と国際法との交錯についての関心を国際刑事法学の領域において研究することで結晶化させ、国際人権犯罪における国内裁判所の役割についての議論のみならず、国際法学・国際刑法学における国内法と国際法の関係に対して有益な知見を提示することである。

重大な人権犯罪は、人権、平和秩序と正義という国際公益の実現を妨することになるので、国際社会の共通利益を実現するために、国家が立法的調整を行う。よって、国内裁判所にも国際的な要素(外国犯の域外重大な人権犯罪)が含まれるようになる。重大な人権犯罪における刑事裁判が「国内刑事法・個人責任・国内管轄事項」といった伝統的な枠組みをどこまで国際法によって、相対化されるかについて、リーディングケースを通じて考察する (1)国際司法裁判所(ICJ)、国際刑事法廷(ICCICTYICTRなど)がどう国内刑事管轄権の行使にについて言及したか、(2)国際法・国際的判決・見解はどのように国内法・判決に解釈適用されていたか、(3)地域人権裁判所(とりわけECtHR)における被疑者と被害者の人権保護の見解が国内刑事裁判にどの影響を持つか。

一方、国家実行の蓄積が国際的な刑事統制の秩序に関与する可能性についても慎重な検討が必要となる。そこで本研究は、国際法と国内法の交錯を踏まえ、緻密な事例分析を通じて、国際的な刑事秩序のガバナンスに対して現実適合的な理論構築を提示する。

EUワークショップの先生及び参加者の方々からは、国際司法裁判所と国際刑事法廷の関与主体(国家と個人)の違いとECHR の締約国の国家責任について、質問をいただいた。確かに異なる責任の名宛人に基づく、分析の視点の混在をより注意しなければならない。また、中西先生からEUの刑事政策について、限定的な権限を条約改正にとり拡大の声があるという情報をいただき、EU刑事政策の研究も一緒に進めてまいりたいと思います。