一橋大学

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2014年7月17日法学研究科

皆さんこんにちは。法学研究科博士後期課程の周でございます。7月2日のEUワークショップで「企業結合規制の欧中比較研究(3)問題解消措置に関する総論」をテーマにして、いままでの研究内容を発表いたしました。ここで発表の要約を皆さんの報告させていただきます。

企業結合規制における問題解消措置とは?

欧州委員会は、当該企業結合を共通市場と合致するものとするよう修正する確約を条件として、企業結合を承認する決定をなすことができる。さらに、決定において、当該確約を遵守させるための条件や義務を規定することができる。一般に欧州委員会は、第三者へのライセンスの付与といった将来の行為について確約する行為的問題解消措置(Behavioral Remedies)よりも、事業分離のような構造的問題解消措置(Structured Remedies)をより適切なものと考えている。

問題解消措置設計の目的

EUにおいて、問題解消措置設計により、競争当局が当該企業結合を承認した事例の蓄積があることに加え、問題解消措置告示が制定されていることである。告示によると、「当該会社の市場シェアを低減させること、および、企業結合により支配的地位が形成・強化された結果、歪曲された有効な競争を回復すること」が問題解消措置設計の目的とされている。この告示に関しては、問題解消措置へのアプローチの透明性を著しく高めたとの評価もある。

問題解消措置が認められるための一般的な要件

EUでは、問題解消措置は、有効な競争の条件を恒久的に回復するものでなければならない、競争上の問題を生じさせるものであってはならない、比較的短期間で有効に実行できるものでなければならない、という要件が必要と判断されている。

問題解消措置の実効性確保手段

EU競争当局は、問題解消措置告示に記述されており、問題解消措置の実効性確保に努めているといえる。具体的に、実効性確保手段として、fix-it-firstアプローチの利用、mix-and-matchアプローチの利用、up-front-buyerの利用、crown jewel(王冠宝石条項)の設定、monitoring trustee(監視役の受託者)の利用、第三者による請求システムの利用、及び紛争解決メカニズムの利用など、たくさんの手段が用いられています。

次回の報告について、問題解消措置に関する各論(典型例としての事業分割、データ分析で企業結合の典型型とその型で付随された問題解消措置の内容を読み出すこと、特に混合合併について)、と中国現行法への示唆などを報告する予定です。