一橋大学

報告者コメント(2015年6月3日 part 1)

2015年6月8日法学研究科

国際・公共政策大学院 グローバル・ガバナンスプログラム 修士2年 葉懿芳

国際・公共政策大学院、修士2年、葉懿芳(ヨウイホウ)と申します。63日のEUワークショップにおいて報告の機会をいただき、修士論文研究計画について報告いたしました。

修士論文のトッピングは「重大人権侵害に対する普遍的管轄権行使―ドイツ・ベルギー・スペイン関連法を中心に」。今回の報告では、普遍管轄権の根拠と行使条件を中心に報告いたしました。

普遍的管轄権行使にあたって衝突・対立が生じるのはしばしば(ヨーロッパ国家の管轄権行使対するアフリカ諸国、アメリカ、イスラエル、中国の反発)、管轄権の根拠を慣習法と条約のいずれに求めるのかを依然として争いがあり、管轄権の行使条件についての議論も未だに収斂していないであると考える。

普遍管轄権の行使は伝統の管轄権根拠(属人主義、保護主義や属地主義という一般原則)が欠如である。普遍的管轄権の根拠を形式法源の条約に基らない、「正当化」しようとする学説は犯罪の性質に依拠する傾向がある一方、立法管轄権の行使にあたって、他国が処罰に対して利害関心を有すると行使の正当性が承認されていることと解すべきという見解もある。しかしながら、以上の見解にはそれぞれの問題点がある。犯罪の性質説には慣習法の類推適用性と実定法・手続き法の直接連結性に説明不足している;利害関心説は国際法上の管轄権認識と相違点がある。

普遍的管轄権の行使条件を国家実行通じて検証すると、絶対的・普遍的管轄権という行使のハードルが最も低い実行から、被疑者が領域内に自発的所在を求める実行、犯罪地国及び被疑者の国籍国が処罰に対して訴追の意思または能力の欠如を求める実行と容疑者あるいは被害者の国籍・住所を求める実行がある。

EUワークショップの参加者の方々からは、問題意識の確認や、立法管轄権域外適用と行使条件の多様性をめぐる問題状況へのコメントなどを通じて、非常に有益な示唆を得ました。

普遍的管轄権の行使条件をめぐっては、国家実行の増加ともに厳しくなる傾向が見込まれるが、その概念自身の必要性が問われることもあり、今回参加者の方々からいただいたコメントを活かして、研究をいっそう進めてまいりたいと思います。