一橋大学

報告者コメント(2015年5月27日Part2)

2015年6月3日法学研究科

2015 5 27 法学研究科

法学研究科 比較法専攻 博士後期課程1年 本庄萌

EUワークショップにおける修士課程での研究の発表についてまとめさせていただく。報告者はこれまで、米国のロースクールでのLL.M.課程、バルセロナ及びブリュッセルでのインターンシップを通して、欧米における動物福祉法の検討を行ってきた。その中でも本報告では、EUにおける化粧品動物実験禁止法と日本への導入の必要性について報告した。

近年、欧州連合(EU)を筆頭に、家畜の適切な取り扱いを定めた法律等、動物福祉に関する法律の制定の動きが世界各国でみられる。その中でも、とりわけ動物実験を行った化粧品開発、製造、輸出入を禁止する法律(以下、同法)は、2013年にEUで化粧品規則として施行されて以降、世界的な広がりをみせている。

そもそも動物実験は倫理的に許される行為なのか。その問いに対して、多くの人は「人の命のためには仕方がない」と答えるかもしれない。しかし、実験動物と一言でいってもその内容は様々。例えば、サルのひたいに薬品を塗り、数日後に皮膚を切り取ってその反応を見るといった動物実験が、人の美容のために行われている。そうした化粧品開発のための動物実験が、EUやそれに追随して類似法を可決した国々(イスラエル、インド、ニュージーランド等)で禁止されているのである。

一方、日本では化粧品開発に限らず法的拘束力を持つ動物実験規制が存在しない現状にある。しかし、カネボウ白斑事件以降、動物実験に基づいた化学製品の安全性確認への疑念を示す消費者も増え、日本でも贅沢品とも言える化粧品に動物実験を行うことに異議を唱える声が高まる傾向にあると考えられる。また、同法の広がりは、海外市場で日本の化粧品が売れなくなるのではないか、という懸念を生む。日本で動物実験を行った化粧品は、EUやインドなどに輸出することができないのである。そこで、経済的観点からみても、EU化粧品規則等とのハーモナイゼーションは求められている。

今回非常に勉強になるコメントや示唆を数多く得たが、その中でも、国際スタンダード確立のために法制定を戦略的に行うことの重要性、その中でもEU化粧品規則の展開があるのではないかという示唆をいただけたことは、非常に興味深いものであった。

2兆円を越える大規模な化粧品業界をもつ日本においても、海外の動向を読みつつ先駆的な法規制の検討を行う必要性があることを改めて気付かされた。

今後は、先生方やワークショップメンバーからのアドバイスやコメントを参考にしつつ、EUの化粧品規則の適用状況等を詳細に分析していきたい。